これは何
前職でも今の仕事でも、よく知らない分野に飛び込んでとりあえずやってみることがわりかし多かった。何年も働いていれば、頻繁に知らないand/or新しい分野に突っ込まれることも少ないと思うが、最近そういうと時にキャッチアップどうやっているのという質問を何度か受けたので、改めて振り返ってみる
特に新卒で入ったコンサルの経験が大きいように思う。DDや短めにMarket entry戦略を考える案件が多く、4-6週間で色々なトピック(輸血用血液製剤、屋根の資材、業務用冷蔵庫、バイオ医薬品等々)について、ゼロから2週間くらいでキャッチアップしてクライアントにプレゼンするみたいなのがよくあった。また、今の仕事でも、カスタマーサポートやQAといった、自分は未経験の領域に関わることがあった
基本的なプロセスは4段階
- 興味を持つ
- 学ぶ対象の位置を理解する
- 領域を絞る
- 吸収する
プロセス | 効果的なツール |
---|---|
1, 興味を持つ | 漫画、ブログ、雑誌、YouTub |
2, 学ぶ対象の位置を理解する | 雑誌、本、記事 |
3, 領域を絞る | 本、記事 |
4, 吸収する | 本、インタビュー、論文、記事 |
1, 興味を持つ
興味持つのめっちゃ大事
興味を持つ、ということは思ったより大事だなと思う。仕事なのでどんなトピックでもやるのだけど、自分がもともと興味が湧く(自分の場合はB2Cや小売の分野)もの以外で、かつ複雑(インフラとか、バイオ系とか・・)だと、結構つらい。大体初日は7回くらいfxxxと言ってた
分野の複雑性は一朝一夕に変えられないけれど、自分の向かい方は変えられる。すべてに対して均等に興味を持つことは難しいけれど、少なくともある程度は(そのトピックに向かう)テンションは上げる方法はある。はやる気持ちを抑えて、ここはある程度時間をかけるべきだと思う
興味を抱く方法は、人それぞれだと思う。とにかく、難しいとか自分に関係なさそうと思えるトピックと自分の距離を少しでも詰めることが大切。自分は「ツッコミを入れられるようになること」を一つの目標に置いている。ツッコミが入れられる状態というのは、詳細はわからないが対象の全体像がわかっていて、それを踏まえた上で、より掘り下げていく質問ができる状態
まず漫画を探す
学ぶぞ〜と思い、本を数冊買い込んで始めるのは王道なのだけど、結構途中で挫けるリスクがある気がしている。「ゼロかわわかる〜」とか「世界一やさしい〜」はそんなに優しくないことも多い。ではどうするか。自分の場合は、とりあえず当該トピックに関する漫画や雑誌を探すことが多い。本と違って、漫画であれば何かしらのストーリーを仕立てなくてはいけないとか、視覚的にまとめなくてはいけないという制約条件があるゆえ、良い意味で詳細が省かれていて、初学者にはとりあえずとっつきやすいことが多い
この段階で触れるものは、必ずしも全体感がなくてもいい。なんとなく、その当該分野や業界の空気感がつかめることが大切。空気感がつかめると、「よくわからないしどうでもいい」から、「こんな感じの人たちがこういうモチベでこんな課題に取り組んでるんだな」ということがわかる
ブログ、雑誌も侮れない
例えばコンサルの時によく製薬業界の仕事をしていて、ある疾患に対する治療の現状や今後の見立てなんかを調べていた。その時よく役立ったのが、当該の疾患の患者さんやその親御さんのブログだった。往々にして自分が今まで聞いたことがない疾患について調べることが多く、医学書や専門書を読んでいても、治療の方針はわかれど結局どういう病気なのかイメージがしづらい。そんな中、ブログを読んでいると、日々どんな感じで、どういうことに苦しんでいるかということが専門用語ほぼなしに書かれているので、イメージがついて気持ちが入る。たとえ短期間であっても、自分の目の前が最終的に何に繋がるのか、最終的な顧客をイメージできることは、自分の吸収の角度を上げると思う
雑誌も中々侮れない。以前不妊治療で使われる試薬に関するプロジェクトをやっていたとき、某大企業の役員向けにプレゼンをしたが、一番参考になった文献は「I wish ママになりたい」という雑誌だった
自分はB2BよりB2Cが好きだなということを転職を繰り返してみて気づいたが、B2Cはなんで興味が湧きやすいか?を考えてみたら、それは自分自身も消費者なので、ある程度わかる。つまり、「わけがわかる」からなのだと気づいた。そういった、自然と関わりがあるとかイメージがしやすい業界以外でも、「わけがわかる」状態にするために、自分なりの方法を見つけられると良いと思う。関連するキーワードをGoogle画像検索に入れてみる、YouTubeの検索に入れてみる、そういった方法でもいいので、とりあえず本読んで挫折、以外の方策を模索してみるといい
2,3 学ぶ対象の位置を理解する & 領域を絞る
全体感を持つ
対象のトピックを調べることに入る前に、全体感を持つことが大切。例えば風力発電、と一言に言ってもXX風力発電もあれば、XX風力発電もあるし、洋上風力発電もある。そしてその手前のカテゴリで、再生可能エネルギーというのがあり、文脈によってはその前に「脱炭素」というテーマがあるかもしれない
特別なツールを使わずともGoogle検索でもかなりの情報量を得られるので、逆にすぐ飛び込むと迷子になって挫折するリスクが上がる。そもそも最初に(例えば上司に)言われたキーワードが、最終的に理解を深めるべきものと違っていることもある。なのではじめは、少し幅を持って眺めて、本当に理解すべき分野がどこなのかの特定が大切だと思う。そうすることで、実は深めるべきはそこじゃなかったということが避けられるし、前提となることを見落としていたということを防げる
QAでの例
例えば今の仕事でソフトウェアテスト(QA)が人が足らないのでやってほしいと言われてはじめたとき。まずググってると「〇〇テスト」と呼ばれるものが無数に出てくる。個別のテストの名称は結構色々あるのだろうなと予想がついたが、カテゴリ名っぽいものでもものが多くて、結構全体像を掴むまでにステップがあった。下記のように、やっとテストレベル x テストタイプという軸があり、その上で前者はだいたい4ステップ、後者はものによって無数に呼び方がある(むしろある種決めの問題で社内で呼び名を揃えることが大切)ことがわかった。ざっくりそのあたりを掴んでから、自分が関わるのはテストレベルで言うところの「システムテスト」であることがわかったので、そこに対して知識を深めていくようにした
単語帳を作る重要性
見知らぬ分野に接すると、必ず自分の知らない単語に触れることになる。例えば先のQAの例における「テストレベル」や「テストタイプ」、及びそれぞれの中にあるテスト名称はすべて初耳だったし、もっと言えばそもそも「QA」が何を指すのかもよくわからなかった。遠回りにようにも見えるが、「単語帳」を作ることはとても大切だと思う。結局専門書や、見知らぬ分野の本や記事を読んでいて進まないのは、そこに専門用語があることで、脳が拒否反応を示すからだと思う。そこを理解すれば、意外とスラスラと読み進めることができたりする。片っ端から「QA とは」「テストレベル わかりやすく」みたいなのを検索窓に突っ込むことを恐れないことである
専門用語がわかってくると、後述するインタビューも効率的に進む。「こいつわかってるな」感が出てくるからである。例えばある疾患における治療方針について聞くときも、「〇〇の疾患の治療方針を教えて下さい」ではなく、「〇〇の疾患において、軽症の患者であれば5-ASAを使用すると思いますが、その後はYYYとZZZのどちらを使用されますか」といった聞き方ができるようになるので、より短距離で答えに到れる。細かい点ではあるが、インタビューを進める中で、その専門用語の略称や通称が見えてくると、それも交えると、より「わかってるな感」が出る。不妊治療(体外受精)では主にICSIとIVFという方法が存在するが、前者の方法を「アイシーエスエアイ」ではなく「イクシー」と呼ぶようになってから、インタビューもよりはかどった経験がある。ちなみに化粧品会社の名ばかり役員をやっていたとき、割としばらくMaybellineを「メイビーライン」と呼んでいて恥ずかしい思いをした。呼称も侮るべしである
余談だが、単語帳を作るようになると、逆にふわっとした定義で使われる用語に違和感を感じるようになる。いい兆候である。コンサルも相応にカタカナが多いが、スタートアップも結構様々な単語が爆誕する傾向にある。コンサルはまだ定義に対してうるさい人が多い印象(なのである程度制御される)だが、スタートアップ(もちろん会社によると思うが・・_)は、新しいことを生み出すことを生業にしているせいか、結構様々なものが爆誕する傾向にある印象がある。生み出すのはいいが、定着にはかなりエネルギーもしくは権力がいる。用語に対するアンテナを持つことは、つまるところそれを受け取る人への配慮・気遣いとイコールだと思う。
4, 吸収する
王道は本
領域が定まり、興味も持てれば、あとはどんどん吸収するだけだ。ここにマジックはないが、期限を決めてやることがポイント。どんなトピックであれ、博士論文が書けるほど深めることも可能なので、この5冊を2週間で読み切る、などと決めて取り組むのがいい。少し脇道にそれるが、本には賞味期限があると思う。面白そうだなと思って本屋で手にとった本も、3日くらい経つとなんだかくすんできて、1ヶ月経つと見るのも嫌になってきたりする(積ん読が他にも貯まっていることもある)。なので、できればはじめの3日、もしくは1週間で読んでしまうのがいいと思う(動線に本屋があるなら、あえてまとめて買わないで1,2冊ずつ買うというのもいいかもしれない
インタビューも効果的
この段階になり、概観がわかり、そして詳細も少しわかってくると、その分野の詳しい人に話を聞いてみてもいいと思う。かなり親しい人とか、気軽に聞ける関係性の人が近くにいるなら、はじめから聞いてレクチャーしてもらうのも一案。ただ、概観がわかっていないとあまり効果的に吸収することは難しいので、せめて概観を理解してから聞くことをおすすめする
聞く際は、なるべく「これについてどう思いますか」とか「〇〇について教えて下さい」というオープンクエスチョンよりも、なるべく、ここまでは理解しているがこのさきがわからないとか、XXだと思っているのだが認識はあっているか?という聞き方をするようにする。その際、これも関係値にもよるが、8割方違うと思っているが、あえて確認のために「AAとBBは別物という理解で合っていますか?」と聞くべきな場合もある。繰り返すと信頼を失うリスクがあるので注意だが、相手にとっては当然でも自分にとってはそうでないこともある。その際に、知ったことにして後でやけどするよりも、早いところ消火しておいたほうがいいこともある
2週間でキャッチアップするとすれば
Day 1-3
- 漫画や雑誌、ブログ、動画などで、断片的でいいから対象の分野に触れる
- 身近にあるもの(例えば小売)であれば行ってみる
- よくわからん単語があればググる & 単語帳を作る
Day 4-5
- 対象の分野の全体像を整理する(ピラミッド型に分岐していくイメージ)
- その中で、今回理解を深めるべき分野をきちんと特定する(逆に、ここは調べないというエリアも決める)
- ここでも、よくわからん単語があればググる & 単語帳を作る
Day 6-9
- 本読む。色々本が出ている分野であれば、5冊くらい読むとだいぶ見えてくると思う
- 本があまり出ていない分野であれば、記事とか場合によっては論文を読む
- インタビューというか、その分野について詳しい人と話す
Day 10
- 吸収したことをドキュメントに落とす
- わかるとこから書き出して、わからない部分だけ括弧付けして空白にしとく
- あとは、残り期間に応じて空白部分を埋める
最後に
経験が積み上がるほどに、新しい分野をやるってのは結構ストレスがかかる。特に初めの頃は快・不快で言うと後者なので、うーんとなるけど、そこを耐え忍んで少しわかってくると、知的好奇心も満たされるし、自分なりの型が見えてくると、なんか違う分野のこれと一緒だなというアハ体験も得られて良い
でも個人的に新しい分野に飛び込むことの効用は、その分野における素人(=マイノリティ)という経験を短期間でもすることで、その分野とそこに関わる人へのリスペクトが生まれること、及び分野外の人が感じる寂しさへの共感を得られることだと思う。要は、優しい人になれる(気がする)
みんな、キャッチアップしようぜ!
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