ホテル隔離の現場から。

low-angle photo of Hotel lighted signage on top of brown building during nighttime

はじめに

久しぶりに海外に行った。やっぱり海外はいいもんだ、と全身で思った。思っていた。入国目前の、あの呼び出しまでは。現地を出国する前日のPCRは陰性だったが、空港での検疫で陽性反応(無症状)が出てしまい、ニッポンの外気に触れることなく、行き先を告げられず黒バンでホテルに搬送。その後7日(1日目はカウントされないので、実質8日)間の収監の模様を記したい

空港〜ホテル

少し前までは、空港で5時間待たされた!みたいな話も聞いたが、今はそこは解消している。事前に登録をしておけば、おそらく1時間強では出られる。全体のプロセスについてはこちらの通りだが、最後に唾液による検査があり、入国となる

唾液を採取された後、掲示板に自分の番号が表示されるまで待つのだが、いつまで経っても自分の番号が表示されない。そうこうしている間に、「XXX番の方、係員のところまで来てください」とアナウンスがある。係員のもとへ行くと、耳元でコソッと「陽性でした。ついて来てください」と伝えられる。現地での検査は陰性、かつ症状もなかったので驚いた。それより、やらかした感が増幅するのでそんなコソッと言わんでもと思った

その後別ゾーン(空港ターミナルをバリケード?で分けていて、その待っているゾーンから2つほど越えた場所)に連れて行かれ、ひとまず座って待つことを指示される。自分以外に3名の人がいた。ベトナム人(おそらく)が2人、40-50代の日本人男性が一人。体温・酸素濃度・血圧を測定され(特段異常なし)、その後係員の方が無症状前提で受け入れ先の調整に入る。だいたい2時間ほど待ったかと思う。自分はやや聞き耳を立てていたので、受け入れ先の調整をしてくれている会話の中からなんとか滞在先が聞き取れた。しかし、その後ホテルに着くまで特段アナウンスはなく、日本語も英語も不自由そうだったベトナム人の人からすると、不安だろうなと思う

2時間ほど待ったが、自分以外の人は別の便で、もっと(4時間とか?)待っている様子だった。待っている間に渡された謎のキャラクターが印字された概要の資料に書かれた「入所」という文字が、なんともリアルであった。この時点では、何日間、とかどうやったら出られるか(「退所」)についての案内はなく、「ホテルに行ってから聞いてください」ということだった

このキャラクター作成の外部委託費はいくらなのだろうか

その後空港の中の裏口?のような部分を通り、駐車場へ。ハイエースより少し小さいくらいのバンでに乗り込む。ここでも特段、どこに行きますというアナウンスがなく、連行されている感を味わえる。行き先は聞き耳を立てて、だいたい30-40分くらいとGoogle Mapでわかっていたので、少し眠ろうと努力する

ホテル到着

ホテルについた。防護服を着たスタッフ5-6人に囲まれ、椅子に座って再度問診&体温&酸素濃度測定。「プリント」と呼ぶべき懐かしきフォーマットの紙の束を渡される。ページは目次通りになっておらず、かつ右上の日付は更新日時がバラバラなので、バージョン管理はあんまされてないんだなと思う。私を含めて新規「入所」者は4名だったが、皆に対して説明ということはなく、ぬるっと部屋の鍵を渡されれ、そのまま部屋へ。駐車場での降車〜ホテル入口の5mが、全身で触れた最初(でその先1週間で最後)のニッポンの外気だった

プリント集

説明をしてくれたのは丁寧な東南アジア系のスタッフの方だった。ホテルの元々のスタッフなのか、特別に雇用しているのかはわからないが、滞在中に対応してくれたスタッフは外国人スタッフが多かったように思う。例えば退所の条件の詳細とか、過ごし方について色々聞きたいことはあったが、あんま細かい日本語は通じない感じだったので、一旦諦めて資料を読みこんでまた追って質問することにした。見知らぬ土地と言えど日本人なのである程度まぁどの辺にいるかはわかるし感覚もあるが、外国で似たようなことがあったら恐怖だよなと思った

よくあるビジホだったが、比較的新しめ?のホテルだったので内装は綺麗だった(狭いが)。相対的には上層階だったので、外が見えず息が詰まるということはなさそうで安心した。タオルやシーツが束になって置いてあり、いよいよここで8日間過ごすんだな感があった

入所の間のルール

振り返ると刑務所に近い軟禁生活だったので、入所/退所という言葉は特に序盤はうっとくる言葉選びだった。また、随所にある「立入禁止」やバリケードが積み重なる。以下ではなるべく療養、という言葉を用いることにする

療養中についての基本的なルールならびに、ちょっとツッコミどころのあったルールについていくつかピックアップして記していく

ルール(基礎編)

体調報告は1日2回

1日2回、チャット(WEBベースでのBotとのチャット)で対応と酸素濃度を報告する。時間は7-8時の間、15-16時の間の2回。親切に(部屋に備え付けの)館内放送で教えてくれるのであまり忘れることはない。土日も関係なく7時にアナウンスがあるので、時差ボケの身には中々つらい部分もあるが、まあ健康に生きようという諦観にも繋がる。なお、「正確な健康状態の把握のため」持参している薬は没収されるという規定らしい。到着の際に荷物1個1個チェックされることはなかったので自分はそもそも後から気づいたが、さすがに持病ある人からは取り上げないと思うが、体調崩れやすい人からすると結構不安なんじゃないかと思う

…。

基本は部屋を出てはいけない

文字通り。療養期間中に部屋を出られるのは、(i)荷物を取りに行く際 (ii) 洗濯をする際 (iii) 散歩の際。ホテルによって規定は違うのだと思うが、 自分のいたホテルはUber Eats、Amazon、それから家族や知人からの差し入れが認められていた。物が届くと、部屋の電話に連絡があり、今から取りに来てくださいと言われる。スタッフの方が一つひとつものを確認して、問題がなければ受け取れる。基本的にはバリケードの下を通した受取型だ

ロビーでのモノの受け渡し場所

洗濯はホテルのコインランドリーが使える(無料)。ただし使用は予約制で、電話で予約をとることになる。自分の場合は到着後3日後の午後くらいに空きがやっとある感じだった。なお洗濯の40分、乾燥の30分の間も、投入〜回収までの間は部屋に戻り、時間が経ったら部屋に電話がきて取りに行くことを繰り返すので、洗濯投入、乾燥機に移動、乾燥機から回収で3回の上下移動が発生する

散歩は推奨されている。ただしこれは13-16時、自分のいるフロア内に限られる。数十メートルあるかないかといった廊下をひたすら往復しまくる一人シャトルラン(歩きだけど)を折に触れてやっていた

無限シャトルラン

 

なんかこう、文字がちょいちょい心にくる

無症状が7日間続けば「退所」。発熱すればその時点でリセット

プリントの中の書面では、(1)無症状が7日間続けば8日目に退所 という記載はあったが、(2)途中で症状が出た場合、の2パターンの記載しかなく、かつ(2)については期限についての明確な記述がなかった。先述のように、到着の時点では明確な説明がなかったので、落ち着いたタイミングで2日目くらいに聞いてみた

スタッフの他に看護師の方が常駐しているようで、無症状が7日間続けば退所ということはわかったが、途中で熱が1回でも出た場合にはどうなるのか?を尋ねた。結論、熱が一度でも出れば、その時点で7日間のカウントがリセットになるということだった。その際にコロナの検査をするわけではないので、どんな要因の熱であれ、ということ。つまり、基本は「7日間のホテル隔離」であり、おそらく多くの無症状の方が結果的に7日間で退所することにはなるが、それは退所の前日まで覆りうるものであり、ある種無期懲役を思わせるものだった

「退所」の条件

これはショックだった。見た感じTerumoのよくある体温計だったのでIoTで自動通知機能はおそらくなく、自己申告ではあるのでなんとでもなるのかもしれない。毎度ドキドキして体温測定をしていた。冷たい水を一気飲みしてから測ればちょっと下がるのか?などと中2っぽいことを考えたりも。ちょうど自地震の影響で停電のおそれがある時期でもあったので、エアコン制限しつつ、止まったらどうしようとヒヤヒヤしたこともあった

なお、看護師さんの方はプリントの中に2パターンしか記述がないことについては、全部書こうとすると分岐がかなり増えて複雑になり、説明が難しくなるので2パターンしか記載がないと仰っていた。まぁたしかに、と思う部分もあるが、自分はもっと背景とプロトコルを共有してもらえるほうが安心するなと感じた。無期懲役は大げさだが、先が見えないというのはとても不安なんだと気づいた

食事は1日3回、置き配形式

食事は3食、弁当が支給される。だいたい時間は8,12,18時くらいだったかなと思う。「今から置きに行くので廊下に出ないでくれ」「置いたので(マスクをして)回収してくれ」の2ステップで、流石に回収の際に横並びのドアが一斉に開いて人が出てくることはなかったが、部屋に備え付けの天井のスピーカーから流れ弁当を回収する様は、さながらイカゲームだった

机の前の椅子に弁当が置かれる

黒い弁当箱が1日3回支給される

朝は、和洋半々くらい

ルール(応用編)

飲み物(水or茶)はオンデマンド方式

1日3回の食事と共に水がお茶が支給される。自分はかなり水分を必要とする人間なので、500ml x 3では足りず、困っていた。後に電話をすればいくらでも?くれることがわかったので、追加でリクエストしていた(準備ができたら電話があり、下に降りていく)。何本までもらえるのだろうかと思い、茶5本水5本もらったこともあったが、悪い気がして、途中でAmazonで水と茶を2Lx9本購入した(全部飲んだ)

求めよ、さらば与えられん

Amazonで注文した

なお、その他にもいくつか備品をリクエストしてみたが、爪切りは貸してもらえたが、加湿器・マグカップの替え・洗剤については支給がなかった。暇なので茶をしばきまくっておりマグカップ替えるか洗えたら、と思ったが、「ボディソープがあるのでそれ使ってください」と言われ諦めた。まあ本当にほしければ多分スポンジと洗剤をAmazonで頼めばいいのだと思う

ボディソープで洗う..かぁ..。

飲酒喫煙は禁止

飲酒と喫煙は禁止だった。自分はタバコを吸わない人間であり、酒はあまり飲む気になれなかったので特段ストレスが増大することはなかったが、タバコを吸うことが常習化している人はきついと思う。色々と制限している中での判断とは思うし、「どっちにしろ不健康だから我慢しろ」という思いも背景にはあるのかもしれないが、かなりメンタルに来る人もいそう

子供も同室

自分の横の人は、支給されていた弁当とメモを鑑みるに、子連れであった。年齢はわからないが、いわゆる一人向けのビジホに子供と2人というのは、かなりの負担であろうな、、と推察する。ちなみに知人で、両親+子供2人で帰国し、子供1人が陽性だったケースは、母+その子のみ隔離になったと聞いた。他に良い手立てが思いつくわけではないが、10平米あるかないかの部屋ではおそらく一度子供から感染→治癒というプロセスを経るのかなと思うと、心が痛む

隣室の人とは顔を合わせたことなかったが、無事出所されたようで、おつかれ、と思った

番号管理

基本は部屋番号が自分のIDとなる。刑務所では番号で呼ばれることがハートに来るという話を聞いたことがあるが、支給される弁当や電話での問い合わせ、体調報告も部屋番号がIDとなるので、ある種その疑似体験をすることになる

部屋番号がIDとなる

脱走は難しそう

前述のように、部屋を出る機会はあまりないが、ロビーは洗濯やモノを取りに行く際にいくことはできる。まあホテルなので出口はあるのだけど、テープの下をくぐったところで警備員もいるので、抜け出すのは難しそうだなと思った

近くて遠い外気

VOD

VODという、昭和感漂う響きに久しぶりに出会った。廊下にあり、500円で買って一晩色々見れますよというアレだ。映画とか音楽番組、及びアレが見れるやつで、これは全室使い放題設定になっていた。色々な意味での配慮なのだと推察する

最後に

「この時期に海外行ったら仕方ないよね」と、自分もそう思ってた。経験者から「隔離きついわ、、」と聞いたことは何度もあったが、そうなんだ..、と聞き流していた部分もあったと思う。新たな変異株も生まれる中、水際対策として、入国の際の隔離の要件を支柱感染よりも厳しくするというロジックも理解できないわけではない

今回、初めて検査で陽性となり、かつホテル隔離を経験してみて、これは思ったより辛いなと感じた。移動の自由を制限されること、自身が菌のように扱われること、罪人のように感じる要素があること。初めての陽性ということもあり、2年前と比べれば先例もたくさんあるので、正体不明のウイルス、とまでは言わないが、それでも一個人としては無症状でもいつ何が起こるか不安な気持ちがある。ただ、もし熱が出ると、また出られなくなくので、そうなったときに本当に声を上げるのか?とも葛藤する。自身は元来ポジティブな人間ではあるが、とくにはじめの数日は、ここ数年でメンタル的にはいちばんこたえたなと思う

現在(2022/03)の方針では、国内で市中感染&無症状の場合は自宅隔離が基本。一方、同じ病になっても(厳密に言えば、なったと判定されれば)、かかったのが海の向こうであると、かなり厳格な行動の制限が求められる。「空港からホテルへの直接搬送」「(部屋からの)外出の制限」「番号管理」等々、一つ一つにはロジックがあるかもしれない。しかしそうして出来上がった全体のプロセスは一個人の行動と精神を蝕むものになっている

「厳格な水際対策」と言えばそこまでだが、裏には「海外からくるもの」への漠然とした不安、そしてそれがマイノリティ(少数派)であることも手伝って「疑わしきは取り除いておけ」という村スピリットも見え隠れする。少し大げさに言えば、日本生まれ日本育ち、基本one of マジョリティとして生きてきて、はじめて「少数派」の経験だったかもしれない。特段不自由なく育ち、結婚にあたり姓を変える必要もなく、恥ずかしながら日本のポリシーが自分のポリシーに反する経験はこれまで特段なかった

そしてそのマジョリティ(≒世論)をベースにしたプロセスが完璧なオペレーションで運用されていることは少し怖くもあった

追伸: 隔離生活のtips

映画・動画・漫画を読む

月並みだが、まあ集中してなにかを読み切るくらいの気持ちで一気見・一気読みする機会と割り切るのはいいと思う。自分は結構トークサバイバー(Netflix)に最初救われた感があった。ドキュメンタルとか、お笑い系はあんま微妙だなと思っていたが、ドラマとエピソードトークが平行して進むというもので、トークもさることながらドラマ自体も完成度が高く、驚いた。すごい推してるわけではないが、コンフィデンスマン(Prime video)とか、あんま何も考えなくて見れるし明るい映画はヘルシーだと思う。漫画では、最近読んで面白かったのは、チ、ファブル、東京トイボックス など。世界情勢に関わる話とか、シリアルなものは避けたおいた方が無難かも

短くていいからアクティビティをする

散歩は、廊下の往復なので結構切なくもなってくるのだが、ヨガ・筋トレは短くていいからやるとちゃんとしているな自分、と思える気がする。いずれにせよ朝はやく館内放送で起こされたりするので、15分でも10分でもやると、気分転換になる。自分はこれでひたすら腹筋やってた。まあ毎日やるしってことで途中で、プロテインとシェイカーも買った

デリバリーとかAmazonで遠慮しない

7日間のために、とも思いつつ、自分は割と数万円使った。よく水分を取るので、まずストックの飲料を買った(おそらくどのホテルでも水分はリクエストすればもらえるが、なんか悪いので)し、あとはアロマディフューザーも買った。隔離期間中リモートワークしていたこともあって、なんとか隔離期間中もQOLを上げることを画策した(ちょうど欲しかったこともあり)

買った。

なんかムーディ

もし差し入れをしてくれる人が周りにいれば、頼ってもいいかもしれない。Amazon, UberEatsが使えると結構満たされるのだが、極端にface to faceでも人との関わりがなくなるので、差し入れをもらえると、世界とつながってる感を感じられて、精神衛生上よい

同僚の優しさ…

残り日数を数えない

自分が心配しすぎているかもしれないが、最終日前日でも熱が出れば出られないというところが自分はかなり引っかかった。ので、あまり期待しないよう、あと数日でなく○日目、という考え方をするようにした

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